戦うアメリカの原点
- 作者: 内田義雄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/03
- メディア: 新書
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アメリカ合衆国が行う戦争の姿がここにある。
奴隷解放という自由主義のシンボルであったリンカーンだが、この本で描かれているリンカーンは、戦う政治家である。
興味深い点
- モールス電信により大統領自らが戦争指導
- ナポレオン戦争時代から近代戦への変化
- 意外に狭い領域でくりひろらげた戦い
- 62万人の戦死者
- 戦いたがらない将軍と戦わせたい大統領の図式
アメリカを戦争に参加させるのは、あくまでも大統領の決断であり、しばしばそれは大統領の保身につながるような。
銃社会に象徴されるように、アメリカは開拓者社会が根底にあるようだ。開拓というと無人の原野に入っていくイメージだが、先住民が社会を築いている中、それは侵略にもなる。アメリカの植民地時代、如何におこなわれたのかが、ナショナルジオグラフィック日本版2007.5版に記載されている。
1492年にコロンブスが到達する以前には、南北アメリカ大陸にミミズはいなかった。なかでも全長30センチにもなる巨大なツチミミズと、3センチほどのアカミミズをアメリカ大陸にもたらすきっかけをつくったのがジョン・ロルフだとしたら、彼は図らずも、アメリカの風景が激変する手助けをしたことになる。
ジェームズタウンは、北アメリカの英国植民地で初めて代表制議会を置いた記念すべき町であると同時に、奴隷制発祥の地でもある。しかし、ロルフのミミズに象徴されるように、この町の歴史にはもう一つ忘れてはならない側面がある。アメリカ大陸にやって来たのは入植者だけではない。実に多様な昆虫、植物、哺乳類、微生物が持ちこまれたのだ。外来種の中には目立った影響をおよぼさなかったものもあるが、生態系を激変させたものもある。英国式の土地利用も、アメリカの大地を大きく変えた。
入植者は、先住民が住んでいない劣悪な環境の地から始まったようだ。
環境に適応できなくて、多くの死者を出しながら、継続的な入植者の渡来と先住民からの食糧入手などの手段で定着していったようだ。
摩擦がありながらも、戦争により征服と抵抗という対立の図式だけではなく、交易というメリットが先住民にもあったようだ。
先住民が激減していったのは、戦争や征服ではなく、入植による環境変化と感染症だった。
古代、日本においても同様な事があったような。
縄文人は、先住民であり、弥生人をはじめとする渡来人により稲作文化が定着し倭のクニが成立を始めたといえないか。稲作は縄文人の生活基盤でない谷間など低湿地に近いところであり、初期には縄文人の生活基盤とは異なる地域に入植したのだろう。異文化の接近は交易と文化の接点となるので、先住民側にも十分なメリットがあったのではと思える。
しかし、「倭国の大乱」の時代の始まりでもあった。