matsuok’s diary

あくまでも個人的意見であり感想です

政治も経済も長期的視野を持てない時代

ガン治療についで、考えさせられたのは以下の新書。

日本経済を壊す会計の呪縛 (新潮新書)

日本経済を壊す会計の呪縛 (新潮新書)

会計基準がかわることにより経営方針が変わり、経済が変化し社会が変容していく様は得心がいく内容だ。外資系に働く自分としては、会社のありかたが今や日本企業も変わらなくなってきたことを身をもって感じているが、それがグローバル経済への参入ということで漠然としていたが、実は会計基準が変わったことによるということだったのかと。
会社という企業は誰のためにあるのかという問いかけは、やはり株主であるというのが現実である。企業で働く側は、経営者も含めてあくまで雇用されている側に過ぎない。会社に収益をもたらし、株価を上げることが株式会社の存在理由であろう。しかしながら、昨今の株主というのは特定の個人や組織体ではなく市場そのもである。株は証券であり会社を保有するためではなく金融資産にすぎないため、もはや株主を特定できないのが現状ではないだろうか。そうなると、企業を長期的な視野で考えるのは長期的に雇用されている従業員しかないが、昨今では経営者でさえ、社外から登用することにより短期的な成果のみが焦点になる。それが減損会計という説明が非常に納得する。しかしながら、もはや会計基準をもとに戻すことができないことを著者も認めている。江戸時代の鎖国状態に戻らない限り、グローバルな共通のルールに従わざるを得ない。黒船来航の結果、10年余りで明治維新という大きな社会変化をもたらしたが、日本社会は徳川幕府体制から王政復古になったような劇的変化がないままグローバル経済に同化してゆくのだろうか。