職業としての宗教
叔母の一周忌に出席して法話を聞かせていただいた。どこかで聞いたような説話で、よく思い出して見ると別の法事でお話されていたものと同じであった。もちろん同一の御坊ではなく別人なんですが、同一宗派の僧侶であり、おそらくなにかテキストめいたものがあるのではと窺わせるものだ。
元は、画家の岡本太郎さんが生前あるテレビ番組で、両手を広げ熱く語っていた話ではないかと。
「僕たちは3億の精子のトップだった。3億の兄弟姉妹と競争して、まっ先に卵子に飛び込んだナンバーワンだった。この世に生まれた人間は、みなナンバーワンだ。エリート中のエリートだ。だから生きることに一人一人自信をもって、力強く、たくましく生きるべきだ・・・」。 「僕たちが生を授かったとき、僕たちの兄弟姉妹となるべき仲間は死んでいった。僕たちは結果としては、残り2億999・・・の兄弟殺しをした。彼らの犠牲のうえに産まれてきたわけだ。だから彼らのためにも、精一杯、力強く生きるべきだ」。
ただ、学校の生徒に米粒を数えさせて3億という数字の大きさを感じさせるという逸話まで付いてくるのまで一致するのを思うと、何かしらかんぐってしまう。そもそも法話というのは、仏典の教えを伺うものであるならば、同じような話になるのはそのとうりだが、別に仏典などに基づいた話でもなく、初めて聞いたときにはそれなりに感銘を受けて聞かしていただいたぐらいでよく出来ている。そこに作為的な印象を受ける。今回の法事を行っていただいた僧侶は、定年退職後にいわば副業として始められた方で、檀家を持たずに何人もの出張僧侶を抱えている寺院に属しているかたで、住職ではない。いまや先祖伝来の菩提寺というものの存在を持っていない世帯が増えたため、葬式と法事を行っていただくためだけの需要があり、そして供給があるようである。これも宗教活動の一環かもしれないが、高齢化社会になりつつある日本社会において、「死」を日常としてどう向き合っていくかは見直しせざるを得ないのだろう。
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