matsuok’s diary

あくまでも個人的意見であり感想です

リスク対策

シルバーウィーク中に積読してあったなかの本。

システムはなぜダウンするのか

システムはなぜダウンするのか

故障しない機械、故障が予知できればいいのだが、まだそこまでは至っていない。また、たとえ、故障しない機械があったとしても、想定できなかった事態に対応するということは必要だ。自分自身は、ITインフラを販売する側にいるわけで、日々、リスク対策に関わる課題を見受ける。コストはシステムの規模とリスク対策により指数関数的に増大するというのが実感だ。リスク対策は、本来、期待している効果外の用件であり、それに多大なコストと労力が費やさられることには理解が得られないことが多い。一番理解されないことは、なぜそのようなことが起きるのかというメカニズムが理解されないと納得が得られない。上記本は、ITにおける複雑で混沌とした背景を技術的に平易に解説している。ITを生業とするものなら、一読をお奨めする。私は、この業界に30年近くいるが、この本に出てくるケースにはみなデジャブ感を感じた。
行政においても、リスク対策に関しては、なかなか理解も得られず、またコスト効果を策定しづらい面もある。伊勢湾台風から五十年が経ち、新聞で特集がくまれたりしているが、そのなかで興味深かったのは、伊勢湾台風以後、同規模の台風があったにもかかわらず、死亡者の数が劇的に減少していることだ。これは、予報や警報の精度が向上している面も大きいが、警報への周知、対応が伊勢湾台風ではおざなりだった反面でもあるようだ。伊勢湾台風では、上陸するのは夜間で、警報自体は昼間にでているのだが、日中が静かな天候だったため、油断からか警報が十分に行き渡らず、避難対応などに遅れが生じた面が強かったとのことだ。
ダム建設中止の話題でかしましいのだが、治水という面において、経済効果やコスト評価はどうしたらいいのだろうか。私は高校生のときに水害にあったことがあるのだが、そもそも住んでいる地域は、所謂輪中地帯であり、古来、水害に悩まされてきた地域である。そこでも、水害が起きたときに古老たちは、こんなことは経験が無いという長雨の結果だった。しかし、冠水している地域は皆、新興住宅地であり、むかしからの住居地域には冠水していなく、そもそもリスクがある地域に家を建てて住んでいたことに気づかされた。それでも、人の人生の中で1回起きるか否かの頻度であることだ。ちなみに、その水害以降、地域の防水対策が整備され1度も冠水という被害に会わなくなっている。これは対策の効果ではなく、以前の水害発生時の天候状況を超える状況になっていないのか判らない面もある。
五十年に一度、あるいは百年に一度といった災害に対して果たしてリスク対策をすべきかという課題にどう答えるべきか。
基本的には、やはり優先順位付けの問題になる。対策はすべきで、問題はどの順序で対応していくかということになる。そのためには発生頻度、確率や発生時の影響度を想定できなければならない。その意味において、現在のダム工事の治水目的というのはどう評価されているのだろうか。ダムにかかる膨大な費用は、堤防整備、排水機の設置、遊水地の確保などのほうが、治水としては効果があるのではないか。ダムによる流水制御では結局制御しきれるとは思えない。本質的には、森林などの保水能力にまさるものはないのではないか。北朝鮮が水害が多いのは森林破壊の影響も大きいのではないか。それは、食糧不足を解消しようとした増産目的の森林破壊の結果であり、そもそも食糧不足を起こしている要因はべつものではないだろうか。