matsuok’s diary

あくまでも個人的意見であり感想です

基本は接待?


秀吉が天下統一できた背景を別の角度から感じさせる書

秀吉の接待―毛利輝元上洛日記を読み解く (学研新書)

秀吉の接待―毛利輝元上洛日記を読み解く (学研新書)

安土桃山時代天正時代にいかに政治が行われていたのか。
軍事的な行為だけではない政権把握の一環でもある。

挨拶に赴くには必ず進物を持参し、迎えるほうは飲食で迎えるというのが基本になっている。
進物として定番になっているのが、太刀、馬そして現金である。
とくに太刀は必須だったようだ。
時代劇などを見ていると、目上のたとえば主人が手柄を立てた部下などに腰物の太刀を与えるシーンが記憶に残っているが、この本を見ていると、むしろ目下のものが、服従の証として太刀を進ずるという感じである。考えてみれば、自分の持っている武力の象徴である刀と馬を献じることによって、服従の証とするのは道理にあっている感じだ。
しかし、これだけ頻繁に太刀をやり取りしているのを見ると、実用としての刀より、贈り物としての太刀の需要がかなりあったに違いない。太刀は消耗品ではなく換金商品というか資産だったろう。

しかしながら、これだけ接待を繰り返したからこそ、豊臣秀長も秀吉も長生きできなかったのではないかと思えてしまう。いわゆる生活習慣病だ。自ら戦をする機会がなくなり、運動することもなくなる。

人身掌握は、接待と権威であり、名誉心であるということだ。いかにお付き合いしていくかということは、宮仕えの基本でもある。
社外への接待だけではなく、社内のイベントとしての飲食は、会社への求心力を高めていることは事実だろう。物を食べるという行為は生物としての基本的根源であり、それを与えられるということは、本能的に最大の許容を感じることなのかもしれない。

会社にとってのさいだいの福利厚生は社食かもしれない。
かのグーグルは、一流シェフによる無料の食の提供があることが話題になっているが、日本でも楽天の社員食堂が無料であるそうだ。
マイクロソフトはジャンクフードやソフトドリンクが無料で提供される。マイクロソフトが創業時にビルたちが会社に住み着いたような状態でソフト開発にあけくれていたころ、冷蔵庫のコーラやジャンクフードを切らさないようにすることが重要だったことの経緯だろう。IT業界では、そのような家族的慣習が大企業になっても残っていたという逸話が結構ある。

サンは、ベンチャー時代に創業者の家族(奥さん?)が手作りのクッキーを提供していたのが、会社の制度として残っていたそうだ。
タンデムは、週末のビアパーティがそのまま行事化し、ビールが冷えた冷蔵庫が会社に設置され、週末や終業後に自由に飲むことができたし、週末にはかならずビアパーティがおこなわれていたそうだ。
いまはなきDECという会社でも、クリスマスには、七面鳥を全社員に配布するという習慣があったが、これは、創生期に社員数名の頃に創業者の奥さんがみずから焼き上げたものを配っていたのがそのまま残っていた。さすがに日本ではケーキ券だったけど。
HPでは、経営陣が一般社員に会社の状況や方針などを伝える会合のことをコヒートークというのも、コヒーテーブルを囲むような小規模で家族的雰囲気のなかでおこなわれていたことを示しているように感じる。

起業が成長期を終え、成熟あるいは衰退期に入ったとき、これらの慣習は存在経緯を忘れられ、無駄な経費と既得特権とみなされて廃止されていく。